Pch MOSFET 2SJ334用にゲートドライバを作成してみた

投稿者: | 11月 27, 2025

きっかけ

簡単に昇降圧(buck boost)コンバータを作成しようと思い、サクッと作成したのですが、ゲートドライバにちょうどよいのが見つからず、ならば作るしか無い、ということで作成しました。

既存のゲートドライバの問題点

多くのゲートドライバがNch MOSFET用のものであり、Highを出力時に電源電圧から1.5V程度低い電圧が出力されます。この影響で2SJ334のターンオフが遅くなったり、オフにできなくなったりします。また、これだけでなく、2SJ334がON状態にならないように、電源投入時の過渡状態にHigh出力を維持する必要があります。自分の手持ちではこれらを満たすゲートドライバは存在しませんでした。試したものを下に書いておきます。

IR4427SPbF

\(V_{OH}=V_S-1.2\) Vと、1.2Vも低いので、ターンオフが非常に遅いです。試しに2SJ334を駆動させたときの波形は下のようになりました。CH1:IR4427出力、CH2:ゲートソース間電圧、CH3:ドレインソース間電圧

計測した回路
IR4427SPbFで2SJ334を駆動したときの波形

かなりターンオフに時間がかかっています。IR4427の出力電圧波形自体がかなり鈍っているので、ゲートドライバの問題です。

起動時ですが、信号入力部分にプルアップ抵抗を付けておくことで、電源投入時は常にHigh出力とすることが可能でした。

TLP250H

\(V_{OH}=V_S-1.3\) Vとのことなので、IR4427と概ね同じです。しかも、こちらは起動時にプルアップ抵抗を付けていても、出力がLowとなるので、電圧が上がるまではMOSFETが常にONになってしまいます

作成したゲートドライバ

以下のようなゲートドライバを組みました。
Q1はPch MOSFETのBSS84を2つ並列にしています。BSS84のオン抵抗が微妙に大きいので2つ並列にしました。2SJ648なら1つとかで済むと思います。貫通電流が少なくするために立ち上がりたち下がり時間がなるべく小さいMOSFETを使うのが良いと思います。
Q2はNch MOSFETの2N7002Kです。Q1と同様に立ち上がりたち下がり時間が小さいものを選びました。
R1は出力のLow→High時(ON→OFF)の立ち上がり時間を遅くするためのものです。メインの回路のスパイクに合わせて選定してください。今回は実機に繋いで値を決定しました。
R2は出力のHigh→Low時(OFF→ON)の立ち下がり時間を遅くするためのものです。メインの回路のスパイクに合わせて選定してください。今回実機に繋いで値を決定しました。
R3はQ1をOFFにするためのものです。小さい値ほど素早くOFFとなりますが、R4との分圧値がQ1のゲートソース間電圧になるので、小さくしすぎるとスレッショルド電圧以下になったり、ON抵抗が増したり、かえって遅くなったりします。
R4はQ1よりもQ2のほうが遅くONしたり、はやくOFFになるようにするためのものです。大きな値ほど、良いですが、R3との比率が重要になってくるので大きくしすぎることはできません。
R5は10kΩは電源投入時にLowにならないようにするためのものです。
Q3はNch MOSFETの2N7002Kです。Q1とQ2のON、OFFを制御するためのものです。ある程度早ければ割と何でも良いと思います。
D1のツェナーダイオードは接続したマイコン(3.3V CMOS)が壊れないようにするためのものです。

作成したゲートドライバ

シミュレーション

適当に4nFを接続し、シミュレーションを行いました。立ち上がりには100ns、立ち下がりには250nsといった感じです。

LTspiceでのシミュレーション結果
立ち上がり時
立ち下がり時

実機検証

PasSでユニバーサル基板の設計を行いました。

ユニバーサル基板の配置
実装したところ

その後に観測した波形です。CH1:ゲートソース間電圧、CH2:ドレインソース間電圧
IR4427に比べて明らかに立ち下がり時の傾きが小さくなっています。立ち上がり時に波形が鈍っているのはわざとで、R2の27Ωの影響です。

観測波形

おわりに

かなり低コストに簡単に作成することができました。PchMOSFETだけでなく、NchMOSFETにも使用できるので、かなりいろいろな回路で使用できると思います。

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